突如やってくるのがリコールの案内。
設計段階で「部品に問題」があったや、工場ラインで「組み付けミスの発覚」などがあった時に発表されることが多いです。
もちろん無料で問題のある部品(箇所)を交換してくれます。
しかし、ディーラーに車を修理してもらう予定を立てなければいけないし、時間がかかるし、本来なら遊びに出かけられるのに面倒くさいですよね。
では、リコールの案内が届いてもそのまま無視して修理をしないとどうなるのか?元ディーラー整備士が内部的な事情をご説明します。
車のリコールを受けないとどうなるのか?

ディーラー側は「リコール実施ノルマ」があり、案内を出してもお客さんが受けてくれない(修理してくれない)と困ってしまいます。
- リコール実施率
- 早期実施目標
メーカーから貰えるお金が減る
リコール対象車が1店舗に100台あるとして、「〇ヶ月後までに〇〇%以上がリコール実施済」という感じで目標があります。
ですので、すべての車を出来るだけ早く作業したい。というのも、整備士が作業した「リコールの作業賃」はディーラーからお客様ではなく、ディーラーからメーカーに請求します。
それが〇ヶ月以上経過すると請求できる額を下げられてしまうのです。
通常:1時間当たりの作業で9,000円の工賃
↓
リコール実施が遅い:1時間当たりの作業で6,000円の工賃
※イメージです。
車に問題があるので、出来るだけ早く修理をして「安全に乗っていただきたい」という気持ちは当然あります。
しかし、同じ作業をしているのに貰える報酬が少なくなると利益が減ってしまうのです。
だからリコールを受けてくれないお客様に対して、「アプローチするよう」に上司から頻繁に指示がきます。

一番は「お客様のため」ですが、実はお金が絡んでいます。
リコール未実施客に再連絡をする(仕事が増える)
リコールは全車両を改善しないといけません。連絡が付かない人でも、何度も連絡をします。
リストに抜き出して郵送で案内状を送ったり、時間をずらして電話をしたりと通常業務以外の仕事が増える…。中には”無視を決め込んでいるお客さん”もいて、その時は本当に困ります。
上司から「まだか、まだか」と言われるし、仕事の評価としても見られ、少なからず個人の昇級にも関わります。



完全に無視されている時は諦めますけど。
内容にもよりますが、一時期ニュースにもなった「タカタのエアバッグ問題」は車検に通らなくなります。
それに命にも関わることなので、出来るだけ早めに対処してもらうことをおすすめします。
部品在庫がないので、すぐに整備してもらえなくなる
リコールで使われる交換部品は基本的に返品ができません。
リコール用で作られた特別な部品は何度も交換する目的で製造されておらず、交換すべき台数が決まっていて過剰在庫にはしません。
つまり、ディーラーは最低限の部品しか在庫していないということ。
例えば、通りすがりでたまたま来店しただけの「予想外のお客様」で使ってしまうと数が足りなくなります。
数が足りなくなると、もちろん部品の発注は出来ますが、連絡が付かずリコール作業をさせてもらえるか不明なお客さんの分までは発注(用意)しません。
今までは面倒くさくて無視していたのが、気が代わってリコールの作業予約の電話をしたけれど「部品が無いので作業日は〇日以降になります」と言われるのは、こういう理由があるからです。



「リコールなのになんで部品がないんだ!」と怒られることがよくあります。
リコールを受けなくても車検は通る
タカタのエアバッグなど一部特殊な案件以外は、リコールの対象になっていても車検は通ります。
ディーラーは端末に車体番号を入れると画面に通知が出るのですが、民間整備工場ではそのようなシステムがなく、そのまま車検作業が完了してしまうことも(認証整備工場)。
ディーラー以外で車検を受けると、陸運局で新しい車検証を発行してもらう時にはじめて「リコール対象ですよ」という紙を貰うので、忘れていた人がそこで指摘されて思い出すことが多いようです。
そのまま無視をしても特に罰則等は聞いたことはありません。そして、既に新しい車検証が出来上がっているので、また無視をする人が実際のところは多いと思います。
「リコールは早急に受けるべき」ですが、焦るほど急いで修理をしてもらう心配することはありません。
ディーラー側にも落ち着いて作業をしてもらえるように、しっかり予約を取って確実にリコールを実施してもらいましょう。
エアバッグリコールは受けないと車検証を発行してもらえない
もしエアバッグのリコールを受けていないことに気付かないまま車検整備を完了しても、陸運局で新しい車検証を発行してもらえません。
メーカーから陸運局にリコール完了通知が行き、車体番号で実施していないことがバレてしまいます。
整備工場で発行する保安基準適合証(車検に問題がなかったことを証明する書類)の有効期限が当日を含めて15日。期限が切れてしまうと新しい車検証を受け取ることができなくなってしまいます…。
ですので、車検済みの場合は15日以内にエアバッグのリコールを受けてから、記録簿(リコールの整備書類)を添付して再度陸運局に提出する必要があります。



もし15日以内に間に合わなければ、完成検査のやり直しです(ほとんどの場合は有料)。
リコールを受けないとどうなるまとめ


問題箇所にもよりますが、もしリコールを受けないからといって「車が爆発して吹っ飛ぶ」な~んてことは、もちろんないです。
しかし、長期間放置をして問題箇所が本当に壊れてしまった時に「関連する部品」までが一緒に壊れてしまうと、修理代を請求される可能性がないとは言えません。



放置したことによる落ち度は、使用者(所有者)ですので。
面倒だったり忘れがちになるリコール。案内が届いたら早急に対処してもらいましょう。

