誰でも簡単にエアコンのお手入れができる市販の洗浄スプレー。最近では、無水エタノール(消毒用アルコール)を使った掃除術を公開しているWebサイトや動画サイトも多くなりました。
プロのお掃除業者に頼むよりも安いですし、予約不要でお手軽。自分で施工したことがあるご家庭も多いと思います。
実はエアコン掃除に揮発性の高い液剤を使用してはいけないとしているエアコンメーカーがほとんど。本来なら使ってはいけません。
例えば、リリラシリーズのエアコンを販売する「コロナ」は、消毒用アルコールや次亜塩素酸ナトリウム(漂白剤)を使用しないでくださいと公式サイトにあります。

空気清浄機でも有名な「ダイキン」では、市販の洗浄スプレーですら使用しないでくださいと書いています。

「ドラッグストアやネット通販でも買える無水エタノール・洗浄スプレー」
と
「使うなと言うエアコンメーカー」
なんだか矛盾しているな…ということで、ダイキンお客様サポートに詳細を問い合わせてみました。
エアコン掃除に素人が無水エタノールや市販洗浄剤を使うと壊す可能性がある

我が家のエアコンは熱交換器(アルミフィン)に黒カビが発生しています。特に樹脂カバーで覆われているところの風通しが悪く、繁殖しやすい環境のようでかなり汚いです。
思い返せば下記記事を書いた前からなっていたので、1年以上放置したままになってしまいました…。

こういった汚れた箇所を無水エタノールで拭いたり市販の洗浄スプレーを吹き付けても良いかなども確認してみました。(使用済みですが)
- 電気部品に液剤がかかるとショートして発煙・発火の原因になる
- 液剤の種類によっては金属および樹脂が腐食する恐れがある
- エアコン掃除は高い専門知識が必要
- お客様がする掃除は説明書に書いてあるお手入れ方法まで
(フィルター掃除まで) - 一般的なプロのお掃除業者に依頼しても問題はない
(高い専門知識・技術がある) - 知識があれば内部洗浄は自己責任でお願いします
- メーカーとしては「お客様自身での内部洗浄はしないで」と伝えている
さらにまとめると、知識と経験が少ない素人がエアコン内部の洗浄をすると「壊してしまう可能性がある」「最悪の場合は火災の原因となり危険」ということです。
次亜塩素酸ナトリウムは字のごとく「塩素成分」が影響して樹脂のドレン(水受け)・金属部品まで変形・穴が開く恐れがあります。
汚れを取ろうとして壊したり燃えてしまっては元も子もないですね。
独立行政法人の製品評価技術基盤機構(nite)は、YouTubeで火災に至った事故の再現映像を公開しています。不適切に扱うとどうなるのか?電気の恐ろしさを確認してみましょう。
電気部品の取り外し・養生がおろそかになりがち

電気部品に液剤をかけなきゃ良いんでしょ?
と考える方もいらっしゃると思います。


ところがどっこい。
自己責任で洗浄スプレーを噴射したところ、めちゃくちゃ気を付けていたのにスプレーが枠に跳ね返ってセンサーボックスにかかりまくってしまいました。こういうことですよ奥さん!
乾ききらないままエアコンを作動させてしまうと動画のようになっていたかもしれず、液剤を吹き付ける前に電気部品は取り外したり少なくとも養生しないと思わぬ事故になります。
とはいえ、手軽に使える市販の洗浄スプレーだからこそ手間がかかる作業はおろそかになってしまうんですよね。
部品を外していると時間がかかりますし、そもそも外し方がわからなかったり、「養生しなくてもいっか」とそのままにしたり。
僕が言える立場ではありませんが、自己責任でやるにしても適当にスプレーして終わりではなく、電気部品がどこにあるかの確認と掃除前の事前準備は必須です。
アルミフィンの表面処理が剥げる恐れも


こちらも自己責任で、濃度80%ほどに薄めた無水エタノールで熱交換器のアルミフィンを歯ブラシでこすり洗いしました。
まあこれが大変。狭いし力を入れるとフィンが折れ曲がるしすごく時間がかかります。しかも無水エタノールは漂白成分が入っていなくて、見た目はそこまでキレイにならないっていう。
最初と比べるとだいぶマシですが、あまりにも時間がかかって途中で諦めました。歯ブラシが届かないところはまだ少し黒ずんでいます。
そして、無水エタノール(消毒用アルコール)の使用で何が問題かというと、アルミフィンに施工している表面処理(保護コーティング)が剥がれてしまう恐れがあること。
- 親水性
(水玉にならず張り付く=風による水飛びを防止) - 耐食性
(薄青色っぽいアルミフィンは保護塗膜あり)
(銀色の剥き出しベア材は保護塗膜なし) - 防カビ
(カビが繁殖しにくくなる)
など
こういった表面処理を高濃度の液剤で拭いてしまうと薄くなったり剥がれたりして効果が持続しない恐れがあります。特に防カビ性は長く快適に使うためにも重要なんですよ。
余談ですが、僕が自動車整備士だった頃に某車種のカーエアコンエバポレーター(熱交換器)の表面処理が甘く、すぐにカビが生えて強烈なすっぱい臭いを発するという不具合が多数ありました。
製造上の問題ですが、「走る・曲がる・止まる」とは関係がないためリコールにもならず、臭くてたまらない車を運転しているお客さんは可哀想だったなと感じます。
※保証期間内に申し出た人だけ無償交換


話を戻すと上記画像を見ていただいても分かるようにアルミフィンは薄青色をしています。
完全に自己責任ですが…油膜を溶かしてしまうほどの強烈な無水エタノール(消毒用アルコール)で安易に拭いてしまうのはおすすめしません。
もし使うとしても、濃度の低い「家庭用」として売っているモノ、プロが使うモノ(強力過ぎない)、掃除後の表面処理再施工が必要と考えます。
届かない場所に汚れが溜まっている


エアコンカバーを開いてすぐに見えるアルミフィンは洗浄スプレーが届きますが、手の届かないところは分解洗浄しかないんですよね。
見落としがちなのが風を送るラインフローファン、熱交換器の裏、ドレン、本体樹脂。こういった見えにくい内部は超汚い!
アルミフィンの表面上はキレイになったとしても、中身が汚かったら臭いは取れませんしカビの影響で悪い風が出たままです。
- 自力で分解する
- 棒状のお掃除グッズで無理やり拭く
- プロに依頼する
完璧にエアコン内部をキレイにするにはこの3択しかありません。あとは長年使っているなら買い替えも視野に。
一応、ラインフローファンの掃除を自力でしてみたので見てください。


エアコン用養生ビニール袋を用意していなかったため、段ボールで水気を受け止めながらエアコン吹き出し口から簡易的な高圧スプレーで汚れを飛ばしました。
画像はまだ滴るくらいの段階ですが、この後びちゃびちゃになります。


落ちてくる水は黒い粒(黒カビとホコリ)でデロデロです…。この風を吸い込んでいたと考えると身体に悪そう。気管の弱い人なら咳やくしゃみが止まらないと思います。


ティッシュで拭き取るとこんな感じ。購入6年後の夏・冬にしか使っていないエアコンでも驚くほどに内部は汚れています。10年単位の長年使っているご家庭はヤバイかもです。
これ以上は全バラシになるのでお掃除業者に頼まないと無理。というよりも面倒くさくてやりたくないです。確実に一日がかりになるのとエアコン用の適切な道具を持っていないので。
例えば、業者さんは本物の高圧スプレーや高温スチーム、坊カビコーティングの噴霧器、養生ビニールはもちろん揃っています。
お願いすると高いのですが、一つ一つの道具を個人で揃えてられませんしプロは慣れているのもあって作業は早いです。「時間と安心を買う」と考えると自分で出来ない人は依頼してみても良いと思います。
参考:お掃除本舗 エアコンクリーニングの作業内容と費用の確認
ちなみにこれでも自動お掃除機能が付いている機種なんですよ。主にフィルターのホコリを取る機能と「冷却⇒結露発生⇒送風」の洗浄しかないので効果は低いです。
約6年間の使用でこんなに汚れるのですから掃除機能が付いていなかったらもっと汚れていたのか、お手入れが足りなかったのか、自動お掃除機能が意味なかったと考えるべきか…。
いずれにせよ、自動お掃除機能が付いていると部品が邪魔をして自分で手入れしにくいです。それにプロに頼むにしても基本料金+約1万円の追加費用が必要になるのであまり良いことはないです。
次にエアコンを買う時が来たら「自動お掃除機能無し」のエアコンを買います。かなり長く使っている人は省電力タイプへの買い替えも検討してみてください。
さいごに


- 電気部品に液剤がかかるとショートして発煙・発火の原因になる
- 液剤の種類によっては金属および樹脂が腐食する恐れがある
- エアコン掃除は高い専門知識が必要
- お客様がする掃除は説明書に書いてあるお手入れ方法まで
- 一般的なプロのお掃除業者に依頼しても問題ない
(高い専門知識・技術がある) - 知識があれば内部洗浄は自己責任でお願いします
- メーカーとしては「お客様自身での内部洗浄はしないで」と伝えている
知識と経験が少ない素人がエアコン内部の洗浄をすると「壊してしまう可能性がある」「最悪の場合は火災の原因となり危険」です。
自信がある、対処できる、何度も掃除した経験があるという人だけ自己責任で徹底的にキレイにしましょう。